Takaku (2020) 医学部偏差値の上昇は医師のキャリア選択とどのように関係しているのか?

論文情報

Takaku, R. How is increased selectivity of medical school admissions associated with physicians’ career choice? A Japanese experience. Hum Resour Health 18, 38 (2020). https://doi.org/10.1186/s12960-020-00480-0

要約

背景:長く続いた景気低迷の中、日本では医学部進学者の人気が飛躍的に高まっている。これは主に、医学は一般的に不況に強い職業であると考えられているためである。その結果、今日の医学部入学を希望する医学部入学前の学生は、1980年代よりも厳しい入学試験に合格しなければならない。本論文では、医学部入学の選択性と卒業生のその後のキャリア選択との関連を探る。

方法:1980年から2017年までの医学部入学の選抜を偏差値で定義して、35歳から55歳までの医師122990人の横断的データとマージした。医学部の偏差値と医師のキャリア選択の様々な指標との関連をロジスティック回帰モデルと通常の最小二乗回帰モデルを用いて探索した。偏差値が55未満の医学部の卒業生について、通っていた医学部に対する固定効果を二値変数で制御した後、より偏差値の高い医学部の卒業生と比較した。

結果:1980年から2017年にかけて、医学部の平均偏差値は58.3から66.3へと上昇し、入学者選抜は大きく激化していることが示された。さらに、医学部選抜の難化は、卒業生が急性期病院でのキャリアを選択する確率が高くなるとともに、自分のクリニックを開業してプライマリ・ヘルスケアでのキャリアを選択する確率が低くなることと関連している。競争力の高い医学部を卒業する(偏差値65以上)と、いわゆる7:1病院などの典型的な急性期病院で働く確率が有意に高くなり、プライマリ・ケア施設で働く確率が低下する。また、卒業生が医師会認定医になる確率が高くなることと関連している。

結論:医学部入学の難化は、専門分野の医師の質の向上と関連する一方で、プライマリーケアに進む医師の供給量の低下と関連している。

メモ