インフォーマル介護への移行が心理社会的側面に及ぼす影響

論文情報

Larissa Zwar, Hans-Helmut König and André Hajek, "Psychosocial consequences of transitioning into informal caregiving in male and female caregivers: Findings from a population-based panel study" Social Science & Medicine 264, https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2020.113281

要約

本論文の目的は、インフォーマル介護への移行がもたらす心理社会的影響を調査し、縦断的デザインを用いて男性と女性の介護者におけるこの関連を調査することであった。集団ベースのドイツ高齢化調査(2014年波、2017年波)の縦断パネルデータを用いた。完全サンプルには、2014年波と2017年波にプールされた最大13,333件のオブザベーション(N = 8658件)が含まれていた。合計すると、完全サンプルの2.56%がインフォーマルな介護に移行した(N = 547)。インフォーマル介護に移行した個人の平均年齢は66歳で、これらの参加者の54.48%は女性であった。確立された尺度を用いて、ネットワークの大きさ、孤独感、社会的孤立感、抑うつ症状、ポジティブ・ネガティブな感情などの心理社会的転帰を評価した。インフォーマルな介護への移行を主な予測因子とした。社会人口統計学的特徴と身体的健康状態はコントロールされた。固定効果回帰分析の結果、インフォーマルな介護への移行は、ネットワーク規模の増加(b = 0.35、p < 0.05)、抑うつ症状の増加(b = 0.63、p < 0.05)、および消極的感情の増加(b = 0.08、p < 0.001)と有意に関連していることが示された。サンプルを性別で層別化すると、男性介護者ではネットワークの大きさ(b = 0.43、p < 0.05)、抑うつ症状(b = 0.93、p < 0.01)、孤独感(b = 0.06、p < 0.05)の増加が見られたが、女性介護者では否定的感情(b = 0.10、p < 0.001)の増加が報告された。本研究の結果は、インフォーマルな介護への移行が主にネガティブな心理的転帰と関連していることを示すことで、これまでの研究を拡張したものである。追加の分析では、女性と男性の介護者は異なる心理社会的結果を経験していることが示唆されている。したがって、インフォーマルケアとその結果を調査する際にはジェンダーを考慮し、女性と男性の介護者のニーズに合わせた支援を行うべきである。