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Gneezy and Rustichini(JLS 2000) 保育園のお迎え遅刻は罰金で改善できるか?

 ニーズィーとリストといえば著名な行動経済学者だが,彼らの研究成果を一冊にまとめた以下の本がecon界隈で話題をよんでいる.非常に読みやすく,内容も査読付き学術論文がベースになっている(しかもトップジャーナルばかり).私もGneezyとListの論文はいくつか読んだことがあったのだが,ここまで色々なことをやっているとは知らなかったし,Field Experimentはここまで進んでいるのかと驚いた.

その問題、経済学で解決できます。

その問題、経済学で解決できます。

 

CVをみれば分かるとおり,業績がものすごい…

 Uri Gneezy

 John List

この本の書評は後にゆっくり書くとして,冒頭で紹介されている論文をピックアップして読んでみた.ちなみにこの論文にはListは入っていない.

Gneezy, U. and A. Rustichini. 2000. "A Fine Is a Price.The Journal of Legal Studies 29(1): 1-17.

【概要】 

保育園のお迎えで遅れてくる人っていますね?どうやったら遅れてくる人を減らすことができるのだろうか? というのが本論文の問題意識である.これに対して,最もシンプルな解決策として「罰金を課すこと」が考えられる.例えば,法学の分野では,Deterrence Theoryとして,より重い罰則の規定が犯罪を減少させると考えられてきた.しかしながらそれは本当だろうか.しいては,保育園でのお迎え遅刻者に対して「罰金を課すこと」は本当に遅刻者を減らすのだろうか. 

【方法】

このことを検証するために,本論文では,イスラエルにおける10ヶ所の保育園で20週にわたりフィールド実験を行っている.最初の4週間は何も介入せず全ての保育園でお迎えに遅刻してくる親の人数をカウント.5週目の始まりには,10のうちランダムに選択した6施設で,10分以上遅れた者に罰金を課す制度を導入した(treatment group).残りの4施設はそのままである(control group).罰金を導入した保育園では.17週目の始めに罰金制度を撤廃した. 

【結果】

 罰金を導入した結果,遅れてくる親が有意に増加した.罰金制度を撤廃したところ,遅れてくる親の数は元に戻らず,すなわち,最初の4週間で観測された遅刻者より増えていた. 

【解釈】

今回の実験での罰金額は子どもひとり当たりNIS10であり,これは当時約3ドルだったらしい.著者らも断っているように,この額が小さいから抑止力がなかったのではないかとか,額を大きくすれば遅刻者が減るだろうとか,色々な突っ込みどころはあるものの,ここで強調されるべきは,罰金の導入が「遅刻」の意味を変えてしまったことである(p.10).つまりゲームの構造を変えたと(p.16).この変化を捉えるモデルがpp.10-15で検討されているが,少々長くなるのでこれは省略する.簡略に述べれば,お迎えへの遅刻が職員さんたちに対する罪の意識で構成されていたのに対し,罰金導入以降は,「少しのお金を払えば遅れても良いのか!」というマーケット的なインセンティブに変化したのではないかということらしい.解釈に関しては,交換理論とか贈与の話等と絡めて,社会学サイドから面白い知見が提供できるかもしれない.