Measuring Causal Effects in the Social Sciences
Courseraで開講されていたMeasuring Causal Effects in the Social Sciencesという講義を受けた.講師はコペンハーゲン大学社会学部のAnders Holm.約1ヶ月の講義内容は以下.
Module 1 - The nature of causal effects and how to measure
Module 2 - The multivariate regression model and mediating
Module 3 - Randomized controlled trials
Module 4 - Instrumental variables
Module 5 - Difference in difference
受けてみての感想↓
初歩的な内容のため新たに学ぶところはほぼなかった.本当の初学者向けといった感じで,講義後のクイズもかなり簡単.実際にソフトウェアを用いて推計する作業があれば良かった思う.来年も開講する予定とのことなので,さらなる内容の充実に期待したい.ともあれ,こうして無料で海外の大学の講義が受けられるのは非常にありがたい.
Gneezy and Rustichini(JLS 2000) 保育園のお迎え遅刻は罰金で改善できるか?
ニーズィーとリストといえば著名な行動経済学者だが,彼らの研究成果を一冊にまとめた以下の本がecon界隈で話題をよんでいる.非常に読みやすく,内容も査読付き学術論文がベースになっている(しかもトップジャーナルばかり).私もGneezyとListの論文はいくつか読んだことがあったのだが,ここまで色々なことをやっているとは知らなかったし,Field Experimentはここまで進んでいるのかと驚いた.
- 作者: ウリニーズィー,ジョン・A.リスト,Uri Gneezy,John A. List,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/08/29
- メディア: 単行本
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CVをみれば分かるとおり,業績がものすごい…
この本の書評は後にゆっくり書くとして,冒頭で紹介されている論文をピックアップして読んでみた.ちなみにこの論文にはListは入っていない.
Gneezy, U. and A. Rustichini. 2000. "A Fine Is a Price." The Journal of Legal Studies 29(1): 1-17.
【概要】
保育園のお迎えで遅れてくる人っていますね?どうやったら遅れてくる人を減らすことができるのだろうか? というのが本論文の問題意識である.これに対して,最もシンプルな解決策として「罰金を課すこと」が考えられる.例えば,法学の分野では,Deterrence Theoryとして,より重い罰則の規定が犯罪を減少させると考えられてきた.しかしながらそれは本当だろうか.しいては,保育園でのお迎え遅刻者に対して「罰金を課すこと」は本当に遅刻者を減らすのだろうか.
【方法】
このことを検証するために,本論文では,イスラエルにおける10ヶ所の保育園で20週にわたりフィールド実験を行っている.最初の4週間は何も介入せず全ての保育園でお迎えに遅刻してくる親の人数をカウント.5週目の始まりには,10のうちランダムに選択した6施設で,10分以上遅れた者に罰金を課す制度を導入した(treatment group).残りの4施設はそのままである(control group).罰金を導入した保育園では.17週目の始めに罰金制度を撤廃した.
【結果】
罰金を導入した結果,遅れてくる親が有意に増加した.罰金制度を撤廃したところ,遅れてくる親の数は元に戻らず,すなわち,最初の4週間で観測された遅刻者より増えていた.
【解釈】
今回の実験での罰金額は子どもひとり当たりNIS10であり,これは当時約3ドルだったらしい.著者らも断っているように,この額が小さいから抑止力がなかったのではないかとか,額を大きくすれば遅刻者が減るだろうとか,色々な突っ込みどころはあるものの,ここで強調されるべきは,罰金の導入が「遅刻」の意味を変えてしまったことである(p.10).つまりゲームの構造を変えたと(p.16).この変化を捉えるモデルがpp.10-15で検討されているが,少々長くなるのでこれは省略する.簡略に述べれば,お迎えへの遅刻が職員さんたちに対する罪の意識で構成されていたのに対し,罰金導入以降は,「少しのお金を払えば遅れても良いのか!」というマーケット的なインセンティブに変化したのではないかということらしい.解釈に関しては,交換理論とか贈与の話等と絡めて,社会学サイドから面白い知見が提供できるかもしれない.
One Hundred Nineteen Stata Tips
Cox and Newton. eds. 2014. One Hundred Nineteen Stata Tips. Stata Press
この本も第3版が出ていたので手に取ってぱらぱらとめくってみた.
Content Analysis
政治学における統計的分析手法の開発で知られるGary King御大の記事が話題になっている.今井先生との共著も多い.
業績も半端じゃないKing先生のHPにはAutomated Text Analysisのページがあり,内容分析に関する論文がここにまとまっている.最新の内容分析にフォローするのであれば少なくともここに挙げられている論文は読む必要がありそう.早速いくつか読んでみる.
Gary King's HP, "Automated Text Analysis"
そういえば未読だがPAでテキスト分析の論文があったのを思い出した.今月中にはこちらも読む.
Grimmer, J. and B. Stewart. 2013. "Text as Data: The Promise and Pitfalls of Automatic Content Analysis Methods for Political Texts." Political Analysis 21(3): 267-297.
Abrutyn(2013)
社会学における制度論の最新刊.
高くて困るが何とか手に入れて読みたい.
この分野の文献は社会学でも幾つか代表的なものがあるが,それらと内容がどのように異なっているのかが楽しみ.
Hasan and Bagde(ASR 2013)
ASR最新号から.
Hasan and Bagde. 2013. "The Mechanics of Social Capital and Academic Performance in an Indian College." American Sociological Review 78(6): 1009-1032.
社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が人的資本にどのような影響を与えているかを検証した論文.ここでは特にピア効果に着目しているが,さらにピアを分類してそれぞれの効果をみているのが面白い.主な分析結果は以下の2点.
(1).優秀な学生とルームメイトになるとピア効果が発生.さらにそのルームメイトとの専攻が近い場合,このピア効果はさらに上昇する.
(2).上記のピア効果は社会階層の相違によって強弱はない.
推計はロジットで行われている.
分析社会学(Analytical Sociology)の備忘録
2014年になりました.
新たにウェブログで分析社会学(analytical sociology)の視点から社会保障を題材に備忘録をつけようと思います.
「分析社会学」という語は未だ日本では知名度が低いかもしれませんが,ハンドブックも出ています.
The Oxford Handbook of Analytical Sociology (Oxford Handbooks in Politics & International Relations)
- 作者: Peter Bearman,Peter Hedström
- 出版社/メーカー: OUP Oxford
- 発売日: 2009/07/16
- メディア: Kindle版
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