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Allison(2009) Fixed Effects Regression Models

固定効果モデルと変量効果モデルについて平易に解説した本.

Fixed Effects Regression Models (Quantitative Applications in the Social Sciences)

Fixed Effects Regression Models (Quantitative Applications in the Social Sciences)

著者は社会学では有名なポール・アリソンで,SAGE本シリーズでは他にEvent History AnalysisとMissing Dataを書いている.
Missing Data (Quantitative Applications in the Social Sciences)

Missing Data (Quantitative Applications in the Social Sciences)

Event History and Survival Analysis (Quantitative Applications in the Social Sciences)

Event History and Survival Analysis (Quantitative Applications in the Social Sciences)


イントロは以下のようにはじまっている.

For many year, the most challenging project in statistics has been the effort to devise methods for making valid causal inference from nonexperimental data.

固定効果モデルで強調されるのは,観察されない個人(グループ)の異質性を除去できることなのでこうした出だしなのだろう.とはいえ,因果推論といったときに固定効果モデルが強調されることはあまりないが...もちろんDiDは固定効果モデルの一種だが.この点はさておき,構成は以下の通りである.

1.Introduction

2.Linear Fixed Effects Models: Basics

3.Fixed Effects Logistic Models

4.Fixed Effects Models for Count Data

5.Fixed Effects Models for Event History Data

6.Structural Equation Models with Fixed Effects

アペンディックスにはstataコマンドも掲載されている.アリソンにならって以下のモデルから出発しよう.
{ \displaystyle

y_{it}=\mu_t+\beta{\bf X}_{it}+\gamma{\bf z}_{i}+\alpha_i+\epsilon_{it}

}
ここで,{ \displaystyle \mu_t}はtにおける切片,{ \displaystyle {\bf X}_{it}}は時間がたつと変化する(time-varying)説明変数ベクトル,{ \displaystyle {\bf z}_{i}}は時間がたっても変化しない(time-invarying)説明変数ベクトル,{ \displaystyle \alpha_i}は個人間で異なるが時間変化しない要素を含む誤差項,{ \displaystyle \epsilon_{it}}は個人間でも時間でも異なる誤差項である.誤差項を2つに分けることがポイントだ.固定効果モデルでは{ \displaystyle \alpha_i}{ \displaystyle \epsilon_i}の独立を仮定するが,{ \displaystyle \alpha_i}{ \displaystyle {\bf X}_{it}}の独立は仮定しない(つまり相関を許容).さらに,仮に{ \displaystyle \gamma}の推計に関心がなければ{ \displaystyle \alpha_i}{ \displaystyle {\bf Z}_i}の相関も許容する.一方で,変量効果モデルでは,{ \displaystyle \alpha_i}{ \displaystyle {\bf X}_{it}}の独立が仮定されている.固定効果モデルでは,偏差{ \displaystyle y^*=y_{it}-\bar{y}_{it}}と偏差{ \displaystyle {\bf X}^*={\bf X}_{it}-\bar{{\bf X}}_{it}}を設定することで観察されない個人の異質性を除去する.固定効果モデルと変量効果モデルのモデル選択について以下のような強調があるのは有益である.すなわち,固定効果モデルでは変量効果モデルに比べて標準誤差が大きく出やすいということだ(もちろん小さくでるときもある).これは,変量効果モデルではwithinとbetweenの両方を含むのに対して,固定効果モデルではwithinの情報のみを使うからである.ハウスマン検定で両者のいずれが採択されるかをみるのみでなく,両モデルで係数や標準誤差に大きな違いがある場合には,それを比較することで,観察されない個人の異質性がどの程度影響を与えているかを考えることができる.固定効果と変量効果の使い分けについては,当然,分析目的に依存している.つまり,アリソンが明示的に述べているように,効率性(efficiency)とバイアス除去のトレードオフが存在している.変量効果モデルの方が効率性があるが,これは変量効果モデルが仮定するところ,すなわち{ \displaystyle \alpha_i}がその他の右側(right-hand side)の変数と独立である場合のみに成立する.この仮定が満たされているのはなかなかないし,パネルデータを生かそうとすれば観察されない個人やグループの異質性を除去することになるので,固定効果モデルの採用が目立つ.このあたりは漸近理論をどの程度重視するかと関連するが....本の中では固定効果と変量効果が混合するハイブリッドモデル(マルチレベルの文脈でよく使われるセンタリング)についても触れられている.アリソン本のハイブリッドモデルについては,偏差{ \displaystyle y^*=y_{it}-\bar{y}_{it}}は投入せず,偏差{ \displaystyle {\bf X}^*={\bf X}_{it}-\bar{{\bf X}}_{it}}のみを投入するが,基本的なメリットは,観察されない個人の異質性と個人内変化の効果を比較しながら分析をできる点である.